頸部脊柱管狭窄症の治療では、どのような手術方法があるのでしょうか。また、気になる手術の成功率についても調べました。
頸部脊柱管狭窄症の症状には、個人差があります。首がひどく痛むけれど、手のしびれがない人もいれば、その反対の症状をうったえる人も…。
個人個人の症状に合わせて、最適な方法で治療をする必要があるため、頸部脊柱管狭窄症にはいくつかの手術方法があります。
その中でも、一般的に採用されることの多い手術方法について、特徴をまとめてみました。
おもな頸部脊柱管狭窄症の手術方法には、
の3種類があり、それぞれに特徴があります。
前方から脊髄や神経根を圧迫する症状に対してとられる手術法。首を前方から切開し、脊髄や神経根を圧迫しているヘルニアや椎間板などの要因を除去します。
椎間板を摘出した空間を埋める必要があるため、骨や金属製のネジなどでスペースを充填し、脊椎を固定する手術も同時に施します。
脊椎を圧迫する要因を直接取り除くことが可能なことから、スムーズな症状回復が見込める手術方法です。
頚椎前方固定術のメリットは特に上肢の痛みや麻痺を改善できることです。ただし、手術した以外の椎間の再発のリスクがあります。
手術は全身麻酔にて行い、切開は5cm程度。そこから顕微鏡を見ながら、頚椎椎間板ヘルニアなどの圧迫の原因を取り除く処置を行います。
椎間板を摘出した場所に患者から採取した骨もしくは人工骨で固定をします。出血はほとんどなく多くても20cc程度。輸血などの心配はありません。
手術時間は1時間から2時間程度。麻酔を合わせるとトータルで3?4時間くらいかかるとされています。[注1]
手術後は比較的早く歩行許可がおります。午前中に手術をした場合、レントゲン撮影で問題がなければ当日の夕方から歩行できます。ただし、骨盤から骨を採取した場合など翌日からの歩行になる場合もあります。
入院は長くて二週間程度。術後一ヶ月はできるだけ安静にしましょう。重労働などはおよそ3ヶ月経過した後から可能となります。合併症については、糖尿病や肝硬変などで深部感染のリスクが高まることや、脊髄や神経根の損傷、血腫などが挙げられます。
[注1]社会医療法人財団 池友会 新小文字病院 脊髄脊椎外科治療センター:頚椎前方除圧固定術(けいついぜんぽうじょあつこていじゅつ)とは
脊柱管拡大術ともいわれる手法。椎弓に切り込みを入れて切開し、その開いた隙間に別の部位の骨や人工骨を押し入れて脊柱管を拡大し、脊髄を圧迫から解放する手術方法です。
椎弓形成術の中でも、椎弓を開く方法は縦割式と片開き式とに分類されます。
縦割式は、椎弓の正中で開く方法で、片開き式は椎弓の片側だけを切りこむことでドアのように開く方法です。
椎弓形成術は術後の再発リスクが大変低いことがメリットです。ただし、頚椎の後弯変形がまれに発生するため、術後は正しい姿勢を取るように気をつける必要があります。
切開は頸部か胸部の後方に5cm(片開き式3cm)程度。そこから顕微鏡を見ながら人工骨で除圧する処置を行います。
出血は多くて100cc程度で貧血症状がない限り輸血はされません。手術時間は1時間から2時間程度。麻酔を合わせるとトータルで3?4時間くらいかかります。[注2]
手術の翌日から歩行許可がおります。ただし、頚椎部分にはソフトカラーの装着が必要です。シャワーは4日以降からOK。入院は長くて二週間程度。術後一ヶ月は頸部を使う運動は控えるようにしましょう。
重労働はおよそ2ヶ月経過した後から可能となります。合併症について一過性で肩が上がりにくくなるケースがあり原因はわかっていません。また糖尿病など深部感染や脊髄・神経根損傷などのリスクもあります。
[注2]社会医療法人財団 池友会 新小文字病院 脊髄脊椎外科治療センター:頚椎椎弓形成術(けいついついきゅうけいせいじゅつ)とは
後方から脊髄や神経根を圧迫する症状に対してとられる手術法。椎弓切除術や椎弓形成術に後方インストゥルメンテーションを用いた固定術をプラスした方法です。首を後方から切開し、脊髄や神経根を圧迫しているヘルニアや椎間板などの要因を除去します。
椎間板を摘出した空間を埋める必要があるため、移植骨、人工骨でスペースを充填し、脊椎を固定する手術も同時に施します。
脊椎を圧迫する要因を直接取り除くことが可能なことから、動的因子の取り残しや骨の後弯化を抑制できるメリットがあります。また、スムーズな症状回復が見込める手術方法です。
切開は頸部か胸部の後方に10cm?15cm程度。椎弓根にスクリューを挿入し、棘突起を切除。椎弓を切除して除圧する処置を行います。
移植骨、人工骨の付きをよくするために関節突起の表面を削ります。スクリューに金属の棒を渡して固定し、続いて患者の骨を腸骨から採取します。この骨や人工骨を、削った表面において脊椎の安定を確保。手術時間はおよそ2?3時間です。
手術の翌日または翌々日からの歩行が可能です。入院期間は10?14日程度。頚椎の固定装具については個々の状態により異なりますが、骨が完全にくっつくまで装着が必要となります。
手術部位周辺の神経や組織が損傷したり、髄液が漏れたりするなどの合併症のリスクがあります。また採取した部分の痛みや血腫なども起こりえます。
内視鏡下手術とは、1995年にアメリカで開発された治療方法。切開手術と比較してわずかな切開でよ、く患者の体に負担をかけない代表的な治療法です。
腰椎椎間板摘出時に使用する内視鏡と同じ内視鏡を用いて行う手術で、高度な技術が必要なため、特定の病院でのみ可能です。
早期退院ができる、長期にわたる頚椎の変形が生じにくいなどのメリットがあります。
手や肩に電極をつけて波形をモニタリングしながらの手術。局所麻酔にて行います。他の手術よりも出血しやすい手術です。
正中から15mm外柄に18mmの皮切。大レーターにてファセットジョイントの境界面を剥離。椎弓を削り切除して除圧。ドレーンを2日間留置します。縫合までの時間はおよそ20?30分程度です。
手術の翌日からベッドから起き上がれて飲食も可能となります。術後二日目からは歩行も可能。早い人では4日、長くても1週間程度で退院ができます。退院後には軽作業が可能と社会復帰が早い治療法です。
いずれにしても、頸部脊柱管狭窄症は専門性の高い治療となります。
頸部の治療を専門とする病院や、より多くの頸部脊柱管狭窄症手術の実績がある医療機関を選ぶことも、手術を成功させるポイントといえるでしょう。
首という極めてリスクの高い部分へメスを入れるわけですから、数多くの症例を持つ病院、または名医に診察・執刀してもらうようにしてください。
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