比較的患者数が多いと言われる腰の病気、腰部脊柱管狭窄症について、その原因や症状、治療法などを解説します。
「ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう」と読みます。
腰の部分にある背骨の「脊柱管」という組織が、何らかの理由で狭くなってしまい、脊柱管の中にある神経の束が圧迫される病気です。
若い人から高齢者まで幅広い年代で発症する病気ですが、特に60代以上の高齢者に多く見られます。
腰部脊柱管狭窄症は、多くの場合後天的な理由によって発症します。
以下が、腰部脊柱管狭窄症になりやすい人の特徴です。
間欠跛行とは、間欠(一定の間を置いて、物事が起こるまたは止む)と跛行(足をひきずるように歩く)の名が示すように、歩き続けるとすぐに足の痛みや痺れによって歩けなくなる症状です。
しばらく休めば痛みや痺れはよくなりますが、歩き始めるとすぐに症状がぶり返してしまうため、長距離を歩くことができなくなる症状です。歩行中に脊髄末端の馬尾や神経根などが圧迫されることで、足の痛みや痺れが現れるのです。
前かがみの姿勢になると楽になることが多いので、杖やシルバーカー、自転車などを積極的に利用するようにしましょう。
間欠跛行とは少し歩くと、すぐに少し休まなければならないような状態のこと。高齢者に多く見られる症状です。
この病気の主な症状は、腰痛です。個人差はありますが、発症した人のほとんどに腰痛が感じられます。なかには立ち上がることも困難なほどの腰痛を感じる場合もあるようです。
なお足の症状は、両足に見られる場合と、片足だけに見られる場合があります。
まれな例ですが、腰痛以外の症状のみ自覚することもあるそうです。
一言に腰部脊柱管狭窄症といっても、脊柱管を圧迫する主な原因に違いがあれば症状にも違いが現れます。
その症状のタイプは大きく分けて3つあります。発症するタイプは、神経根型(しんけいこんがた)・馬尾型(ばびがた)・混合型です。それぞれの特徴を見ていきましょう。
神経根とは、脊髄から足元に向かって左右に伸びる神経の束のこと。腰部脊柱管狭窄症を発症する患者の70%がこの神経根型だといわれています。
すでに変形性腰椎症や腰椎分離(けいついぶんり)すべり症、腰椎変性すべり症、腰椎椎間板ヘルニアといった腰のトラブルを患ったことのある人に起こりやすいといわれています。
この神経根型は、左右どちらかの身体の側面で痛みやしびれが起きるタイプです。症状は腰から脚にかけて現れるものが主ですが、左右両側に同様の症状が起こる場合もあります。代表的な症状は、長時間の立った姿勢や歩行による脚の痛みやしびれ、間欠性跛行(かんけつはこう)などがあります。
また、最初から激しい痛みを伴うことは少なく、身体の重さや倦怠感、違和感から始まり、徐々に痛みやしびれなどに発展していきます。
腰を反らした姿勢をとると、症状が悪化することがあるでしょう。症状を和らげる工夫でも紹介したように、前かがみの姿勢で症状が緩和されるのが特徴的です。
馬尾とは脊髄の末端にある神経の束のこと。腰部脊柱管狭窄症を発症する患者の14%がこの馬尾型だといわれています。
馬尾型は、両脚に症状が現れることが多く「しびれや痛み」「異常感覚」「間欠性歩行」が頻繁に起こります。
症状の痛みは深刻なものには発展しづらいようですが、下半身の様々な場所で違和感を覚えたりしびれや麻痺を感じたりします。
また、馬尾は膀胱や直腸の働きとも緩解しているので、残尿・頻尿・尿漏れ・便秘といった排泄面でのトラブルを招きやすくなります。
混合型とは名前の通り、神経根型と馬尾型の原因が併発すること。腰部脊柱管狭窄症を発症する患者の16%が、この混合型だといわれています。
脊柱管の狭窄症は腰椎の1カ所だけではなく、複数カ所起きることもあります。当然、神経根型と馬尾型の療法の要素が一度の発生することもありえるでしょう。
主な症状は座骨神経痛、間欠性跛行にお尻から足裏にかけて痛みやしびれが生じることが多いです。これらの症状が重症化すると、重篤な排泄障害にまで発展することがあります。
混合型は重症化しやすい傾向にあるので、患者のほとんどが手術による改善を希望します。また症状が重症化しないうちに早めの対処が必要なので、違和感を覚えた場合は早めに病院へ相談に行くようにしましょう。
脊柱管狭窄症の症状は、腰や背中を反らせるとより強く現れます。逆に、前かがみの姿勢であれば症状は和らぐため、外出する時などは前かがみの姿勢を保つ工夫をするとよいでしょう。
前かがみの姿勢のまま移動する際に便利なのが杖です。杖をつくことで重心のバランスが取れ、前かがみの姿勢でも移動がしやすくなります。
杖のほか、シルバーカーもおすすめです。杖同様に前かがみの姿勢でも楽に歩け、買い物の荷物などを入れて歩けますし、疲れた時は座面に座ることもできます。
そのため、歩き過ぎなどで悪化する間欠跛行(かんけつはこう)の対策にも効果的です。
長距離を移動する場合は、自転車を活用するとよいでしょう。一見して腰に負担が掛かりそうな自転車ですが、乗っている時は重心が前へ傾くため、自然と前かがみの姿勢になります。
車の運転が難しい方でも、自転車であれば負担なく乗ることができるはずです。
脊柱管狭窄症に罹ると、寝ている時の姿勢が腰に負担を与え、痛みによって不眠症になることがあります。
不眠の解消と症状の悪化を防ぐためには、”腰にとって最適な姿勢”で眠る必要があるのです。
仰向けやうつ伏せでの就寝は、腰に負担を与えるため脊柱管狭窄症の人は避けるべきといわれています。
しかし、実際には症状によって楽な姿勢は異なるため、一概にどの姿勢のほうがよいとはいい切れません。個人ごとに楽である姿勢をとるべきです。
このような問題の対処法として挙げられるのが、クッションやバスタオルを体の下に敷く方法です。仰向けが楽だという人は”膝の下”に、うつ伏せが楽な人は”お腹の下”にクッションなどを入れるとよいでしょう。
腰が反ってしまうことを防ぎ、負担を軽減できます。側臥位(そくがい/横向きに眠ること)で眠る場合は、クッションを両足の太ももで挟み込むようにすると楽に眠れます。
直接的な原因は、脊柱管が狭くなること。脊柱管が狭くなる原因は大きく分けると次の2つです。
上記以外にも、腰部の脊柱管狭窄症になりやすい人にはいくつか特徴があります。
スポーツで腰や首を酷使したり、デスクワークで長時間同じ姿勢のまま作業したりすることが多い人です。
この特徴が当てはまる人は血流障害を起こしやすい傾向にあり、それが腰部の脊柱管狭窄症を引き起こす恐れがあります。
腰部の脊柱管狭窄症を患っている人は50~80歳に多く、女性よりも男性が発症しやすいといわれています。
定年後、自宅でテレビやパソコンを使用する時間が長くなり、座っているのが多くなったという人もいるでしょう。
もし心当たりがあるなら、散歩に出かけたりストレッチをしたりするようにして、体への負荷を和らげるように努めてください。
また、普段からゴルフやテニスを趣味としている人は、腰を想像以上に酷使している恐れがあります。
そのため、負担のない運動に切り替えることを考える必要があります。
特に水中ウォーキングは、浮力があるため腰へ負担をかけることなく運動できるのでおすすめです。
なお脊柱管は、加齢とともに誰でも狭くなるので「脊柱管が狭くなる=腰部脊柱管狭窄症」というわけではありません。
脊柱管が狭くなり、神経が圧迫されて「足のしびれ・腰周りの違和感・排尿障害・間欠跛行(かんけつはこう)」等が出ている場合、腰部脊柱管狭窄症と診断されます。
治療法は症状のレベルに応じて主に2つに分けられます。
症状を緩和するために、以下のような治療をしながら経過観察をします。
これらの治療をしながら、症状が落ち着くのを待ちます。
保存療法で改善が見られない場合などは、手術を行います。手術の目的は、脊柱管を広くして神経の束への圧迫を取り除くこと。
脊柱管の状態に応じ、開窓術(かいそうじゅつ)・椎弓切除術(ついきゅうせつじょじゅつ)・脊柱管拡大術(せきちゅうかんかくだいじゅつ)のうちから、手術法が選択されます。
なお重症の場合には、患者本人の別の部位の骨を移植もしくは、金属を用いて脊椎を固定する手術が同時に行われることも。
手術後は数日間の安静とリハビリが必要です。
腰部脊柱管狭窄症の治療は、重度でない限り薬物療法や保存療法がメインで行われます。主に用いられるのは次の5つの薬です。
消炎鎮痛薬(しょうえんちんつうやく)とは、体の痛みや炎症を緩和する薬です。痛みを生じさせる「プロスタグランジン」の生成を抑えることで、痛みを抑えてくれます。
また、飲み薬のほか、塗り薬や湿布として処方される場合もあります。
【副作用】
胃腸障害を誘発します。そのため、処方された場合は胃酸の分泌を抑えるプロトンポンプ阻害薬も一緒に処方されます。
血管を広げることで、血流を改善することができる薬です。腰部脊柱管狭窄症は狭くなった脊柱管により、神経組織に血流障害が起きることで痛みが生じます。
このリマプロストは、血流障害を改善することで、痛みを和らげることができるのです。
【副作用】
下痢や腹痛、吐き気などが現れることがあります。ただし、思い症状が見られるわけではありません。
筋弛緩薬(きんしかんやく)は、簡単にいえば緊張して凝った状態になった筋肉をほぐすことができる薬です。
腰部脊柱管狭窄症になると、腰部の痛みによって筋肉が縮小し、さらなる痛みが生じることがあります。筋弛緩薬はそうした筋肉の緊張を緩和し、痛みを和らげることができます。
また、血管を広げて血流を増やす効果もあるため、リマプロストのような、血管の収縮に対する痛みへの緩和効果も得られます。
【副作用】
眠気やふらつき、胃の不快感などの胃腸障害が現れることがあります。
ビタミンB12製剤は、赤血球の数を増やし、傷ついた神経の修復を促進する効果があります。血流量の改善と同時に、神経の働きを改善させることで、うつ症状の抑制にも効果をもたらします。
腰部脊柱管狭窄症にかかると、長らく疼痛に悩まされることでうつ症状に陥ってしまうことがあります。
うつになると通常よりもさらに痛みが増すため、ビタミンB12製剤の処方により、うつ症状による痛みの悪化を防ぐことができるでしょう。
【副作用】
まれに吐き気、下痢、発疹などが起こる場合があります。
脊柱管が狭くなると、末梢神経への障害により痛みが生じることがあります。この神経性疼痛治療薬は、そういった痛みを和らげるために処方される薬です。
また、「痛み」を伝える神経伝達物質を減少させ、痛みを抑えることができます。消炎鎮痛剤とは作用が異なるため、消炎鎮痛剤で効果がなかった場合に処方されるのです。
【副作用】
眠気・めまい・ふらつきが現れることがあります。
このリマプロストは、薬物療法による統計で、患者さんの約80%に処方されています。この薬の効果は血管を拡張させて、血流を良くすることで腰部脊柱管狭窄症の痛みを和らげることです。
脊柱管狭窄は脊柱管が狭くなることで神経を圧迫しますが、神経の圧迫は血行障害も引き起こします。
血行が悪くなると痛みをもたらすホルモンが分泌され、結果として強い腰痛が現れるようになるのです。
リマプロストはこの痛みをもたらす血行障害を改善することができます。服用することで血行障害による痛みを抑え、体の負担を和らげることができるでしょう。
これは、第21回日本腰痛学会「腰部脊柱管狭窄症に伴う腰痛およびこむら返りに対するリマプロストの有効性」という演題。ここでは、リマプロストの服用によって「VAS」で約6割の痛みを訴えていた人が4割程度の痛みにまで抑えられたという結果が提示されました。
VASとは、簡単にいえば患者さんの痛みを0~100までで評価する方法。診察の際に、「今の痛みは0~100まででどのレベルですか?」とヒアリングがありますが、それがVASと呼ばれる痛みの測定方法です。
また、学会ではリマプロストを投与した場合、8週目から有意に痛みが減少したことが発表されています。このことから、リマプロストの有効性の高さが示されています。
重い副作用は、滅多に現れません。まれに、血管拡張作用によって顔のほてりや頭痛、動悸といった症状が現れることがあります。
ほかにも、下痢・腹痛・吐き気・発疹・かゆみが現れることがあるため、副作用には注意しましょう。
重度の副作用は、食欲不振や体のだるさ、発熱、黄疸などの肝障害が現れることがあります。
重度症状が現れる可能性は低いものの、服用した後に重い症状が現れた場合はすぐに病院へ受診しましょう。
向くタイプ
向かないタイプ
1.治療薬ではなく、あくまで痛みを改善するための薬なので、飲み続けて腰部脊柱管狭窄症が治るわけではない。
2.薬を飲むことを忘れてしまうと、再び強い痛みが現れるようになるので、医師から指示された用法用量を守ってきちんと飲み続ける
医師によって、消炎鎮痛剤と一緒に処方することもあります。しかし、このリマプロストは、消炎鎮痛剤や神経性疼痛治療薬での効果が薄かった場合に処方されます。
消炎鎮痛剤・神経性疼痛治療薬・リマプロストはそれぞれ痛みを緩和する仕組みが異なります。一方の治療薬で効果がなかったとしても、別の治療薬を用いることで痛みが緩和されることがあるようです。
また、リマプロストは下肢の痺れや歩行障害へ改善効果があるとされているため、下肢の負担を訴える人にも処方されます。
治療効果の高い薬ではない
リマプロストは鎮痛効果の継続時間が短いため、1日に必ず3回は飲まなければなりません。
飲み忘れてしまったり飲むことが面倒でサボってしまったりすると、痛みがぶり返す可能性もあります。1日3回の服用は、欠かさず行いましょう。
値段の高いリマプロスト
リマプロストは、1錠ごとの価格も高めに設定されています。さらに1日3錠と多く服用することから、費用負担が大きい薬といえます。
価格は錠剤を製造するメーカーや、病院によって変わってくるため、一概にいくらかかるとはいえません。
最近では、リマプロストのジェネリック医薬品も販売されていますが、それでも費用負担が軽いとはいえません。
鎮痛薬であるリマプロストは、腰部脊柱管狭窄症を完治させない限り、毎日のように飲み続けるため、毎月の医療費負担が懸念されます。
利用したい「高額療養費制度」
治療費の負担を抑えるために利用できるのが、保険診療。腰部脊柱管狭窄症は立派な病であるため、保険適用によって自己負担額を3割に抑えることができます。
また、腰部脊柱管狭窄症は治療費がたいへん高額となるため、高額療養費制度の適用範囲内になる場合もあります。
最近になり、70歳以上の上限額が変更されたため、腰部脊柱管狭窄症になりやすい高齢者の人は注意しましょう。
【平成29年8月】
【平成30年8月】
収入に応じて対象となる上限額が変わります。
しかし、制度の申請により、支払った高額な医療費の一部が払い戻されるため、医療費が高額である場合は積極的に活用しましょう。
保存療法と手術のどちらを選んだ場合も、リハビリは必ず行います。手術の場合は治療の予後を回復するため。
そして保存療法の場合は、症状とうまく付き合いながら生活をするという目的があります。
腰部脊柱管狭窄症を患った場合、激しい運動をすることは厳禁です。そのため、体操や運動をするのは危険なのでは?と考える人も多いでしょう。
しかし、この体操や運動は、脊柱を支える筋力を保つ上で重要なのです。
年齢が高くなると、若い頃のように体の筋肉を使うことが少なくなり、筋肉が萎縮してしまうようになります。
整体などでよく「筋肉が硬くなる」という表現がなされますが、これは筋肉の萎縮を指したものです。
筋肉の萎縮は体操をすることで改善させることができます。定期的に正しい方法で体操を行い、症状改善を目指しましょう。
【体操の方法】
8の字スクリュー
「頸部脊柱管狭窄症治療のかぎとなる『運動療法』」でも紹介されている体操です。腰部脊柱菅狭窄症の症状を緩和させるには、体幹の筋肉を鍛えることが重要。
8の字スクリューは、腰の体幹を効率よく鍛え、S字カーブのある正常な背骨へ促すとされています。
腹式呼吸
腰部脊柱管狭窄症の症状を和らげるには、「腹横筋」と呼ばれる筋肉をある程度鍛えることが重要とされています。
腹横筋はお腹周りの筋肉の中でも深い位置にあり、体幹を保持するために重要な筋肉。この筋肉の機能を高めることで、腰への負担を抑えることができるでしょう。
腹横筋はいわゆるインナーマッスルであるため、一般的な腹筋を鍛えるやり方では機能を高めることはできません。
腹横筋を発達させるには、腹式呼吸を行うことが有効だとされています。
【腹式呼吸の方法】
※手でお腹の動きを意識しながら行うと効果的です。
紹介した腹式呼吸の方法は寝て行うものですが、慣れると立った状態でもできるようになります。
この腹式呼吸をしながら、8の字スクリューを組み合わせると、より効率的に筋肉の機能を高めることができるでしょう。
やりすぎないようにする
紹介した体操や運動は、腰部脊柱管狭窄症の緩和に効果的とされています。だからといって体の痛みや負担を押してまで行うと、かえって腰部脊柱管狭窄症を悪化させる恐れがあります。
方法を紹介する所では、目安として回数を記載していますが、行っている途中で痛みやつらさを感じた場合はすぐに体を休ませましょう。
体操で症状が治ることはない
紹介した体操や運動は、あくまで痛みなどの症状を緩和させる目的の、いわば対処療法です。体操や運動だけで腰部脊柱管狭窄症を治すことはできません。
あくまで生活の質(QOL)を高める目的のものだと割り切り、無理のない範囲で行いましょう。
医師に相談する
腰部脊柱管狭窄症を罹患した場合、人によって症状の重さは異なります。
重度の場合はいかなる動作も厳禁となる場合もあるため、必ず医師に紹介した体操や運動ができるか相談しましょう。
腰部脊柱管狭窄症のリハビリをする場合、注意しなければならないのが、日常生活での腰への負担です。
普段のなにげない動作でも、腰に大きな負荷が掛けられてしまうことがあるため、常に意識して動作の工夫を行いましょう。
高い所の荷物を持つ時のポイント
棚の上からものを取る時、荷物が大きく、重量があると、両手で支えるために腰を反らしてしまうことがあります。
腰部脊柱管狭窄症の人にとって、腰を反らせる動きは厳禁。高所から荷物を取る時は、必ず台を足元に置き、腰を反らさずに荷物を取りましょう。
低い所の荷物を持つ時のポイント
足元の荷物を持つ時、ついやってしまうのが、腰を折り曲げてから荷物を持つというやり方。
しかし、この方法は、荷物を持つ際に体重と荷物の重量が一気に腰へ与えられるため、腰への負担が非常に大きくなります。
足元の荷物を持ち上げる際は、まず地面にしゃがみ込み、腰を曲げずに足の力を使って荷物を持ち上げるようにしましょう。
座る姿勢のポイント
椅子に座る際に、浅く座った状態で腰を背もたれに、もたれ掛かるような座り方をする人が多くいますが、この座り方は腰の負担が大きいため気をつけましょう。
腰の負担が最も少ない座り方は、椅子の奥まで深く座り、背もたれへもたれ掛かる方法です。顎を引き、お腹をへこませるようにして、背筋を伸ばすような姿勢を心がけるとよいでしょう。
また、長時間椅子に座っていると、疲れによってどうしても姿勢が悪くなってしまうので、ベッドに横になるなどして休息を取りましょう。
歩く姿勢のポイント
腰への負担を避けて歩く場合、多くの人は背筋を伸ばして歩こうとしますが、腰部脊柱管狭窄症を患った人だと問題です。背中を伸ばして歩くと、痛みによる負担や、背中を反らす体勢になりやすくなるのです。
歩く時はやや前かがみになり、背中に負担が掛からない体勢で歩くとよいでしょう。その際、杖やシルバーカーなどを利用すると、より歩きやすくなります。
立ち仕事をする時のポイント
台所などで家事をする場合、調理や洗いものに集中するあまり、前かがみの姿勢になることがあります。
歩く場合とは異なり、座る時や立ち仕事の時に前かがみの姿勢を取ると、腰への負担が大きくなるため問題です。立ち仕事をする時は、足元に台を置き、片足を乗せた状態で行うとよいでしょう。
手術後は、上記にある保存療法が行われます。消炎鎮痛剤や神経ブロック療法によって痛みを取り除き、さらに理学療法により術後の経過をよくします。
そしてこれらの治療に加え、手術後はコルセットの装着も行わなければなりません。コルセットの装着によって得られる利点は、姿勢を固定できることです。
脊柱管狭窄症ではほとんどの場合、特定の姿勢をとることで脊柱管による神経への圧迫を減らし、痛みを和らげることが可能なのです。
手術後にコルセットを装着すれば、痛みは抑えられ、さらに患者さんが”症状を悪化させる悪い姿勢”になることも防げます。つまり、治療効果を高めることができるのです。